2025年、フォードの独立電気自動車(EV)部門「Model e」が通期で48億ドルもの損失を計上したというニュースは、業界を大きく揺さぶった。販売台数17万8000台に対し、1台売るごとに約2.7万ドル(約430万円)の赤字を垂れ流している計算になる。文字通り、売れば売るほど資金が底をつく深刻な事態だ。
この窮状を前に、同社はついに大きな決断を下した。過去5年にわたりバッテリー式電気自動車(BEV)事業をけん引してきた「Model e」を解消し、同部門の顔でもあったダグ・フィールド氏の退任を発表したのだ。
実際、2025年末には174億ドルの特別損失を計上し、ブランドの象徴だった「F-150 Lightning」の生産打ち切りに踏み切った。次期モデルは純粋なBEVではなく、ガソリンエンジンで発電するレンジエクステンダー電気自動車(EREV)へとかじを切る。収益化の目標も2029年まで先送りされた。大型車を軒並みBEVへ置き換えるという野心的な計画は、収益という壁を前にして、事実上の行き詰まりを見せている。
対照的なのが、米国市場で着実に利益を積み上げるトヨタの動きだ。2025年モデルからカムリをハイブリッド車(HV)専用とし、2026年モデルではRAV4もこれに追随する。すでに2024年の時点で、RAV4の販売台数の半分以上を電動車が占めている事実は重い。HVはもはや特別な選択肢ではなく、最も効率のよい“主流”になったのだ。生産の複雑さを排除し、今ある資産から最大限の稼ぎを引き出す――その愚直な取り組みが、数字となって表れている。
BMWもまた、次世代モデル「ノイエ・クラッセ」の開発を進める一方で、ガソリン車やプラグインハイブリッド車を2030年代まで併存させる構えを崩さない。先行きが見えない時代だからこそ、各社は理想論を排し、保有する資産の価値をどう守り抜くかという現実的な判断を迫られている。
なぜなら、BEVへの急進的な移行は、充電インフラや資源供給網という新たな依存先を生み出し、既存のエネルギー資本や製造インフラの価値を意図的に毀損させる動きだからだ。フォードがEREVへ舵を切った事実は、完全な電気化が招く資源の独占を回避し、内燃機関の優位性を隠れ蓑にしながら技術的な主導権を維持しようとする生存戦略の現れである。一方、トヨタのハイブリッドへの固執は、電力網の負荷を制御しつつ既存のサプライチェーンを最大限に活用して、他社の追随を許さない独占体制を構築しようとする、目に見えない布石そのものである。